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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)46号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人加藤充上告趣意第二點について。

しかし、原判決の擧げている證據によれば、被告人は、判示約十ケ月の間、主務大臣の許可を受けないで、判示同盟加入者その他の者の委囑により所得税に關する相談に應じ又は判示若林利治外三九〇餘名から岸和田税務署に提出する所得税審査請求書等の作成について指示を與え、同人等を代理して同税務署と交渉した事実、言い換えれば、反覆繼續の意思を以て、多數人の委囑を受け租税に關する審査の請求等の事項につき代理を爲し若しくは相談に應じた事実を肯認することができる。從って、原判決が被告人を税務代理士法第二一條所定の許可を受けないで税務代理業を行ったものと認めたのは正當である。そして税務代理士法は、税務代理士の業務と利益とのみを保護することを目的とするものではないから、假りに所論のように被告人の所爲が税務代理士の業務と利益とを侵害しなかったとしても同法の違反にならないとはいえない。また、同法は、税制改革の政治活動の自由を制限し若しくは處罰するものでないこと勿論であるが、しかし、假りに判示行爲が税制改革を目的とする政治活動の過程中になされた一手段に過ぎないとしても、目的行爲が適法でも、手段たる行爲にして非合法であって法令所定の罪名に觸れるときは、犯罪を構成し處罰を免かれないこと言うを待たないから、この點の主張も採ることができない。また、税務代理士法にいわゆる「税務代理業ヲ行ヒタル者」たるには反覆繼續の意思を以て同法第一條所定の行爲を爲せば足りるものであって、その行爲に對し報酬又は利益を得る意思あること若しくは現にこれを得た事実の存在することを必要とするものではないから、この點についての主張も採ることができない。(その他の判決理由は省略する。)

よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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